第9回 審査を終えて
本日(2022/11/7)、伊丹アイフォニック小ホールにて第9回日本オカリナコンクールの動画による審査会を開催しました。
全国各地からの出場者の熱い演奏の数々に寒さを感じることなく行いました。
入賞された皆さま、おめでとうございます。
入賞されなかった皆さまもコンクールへの挑戦ありがとうございました。
ご理解ご協力くださいました各団体様、各企業様に心よりお礼申し上げます。
また、遠方よりこの審査にお集まりくださいました先生方、長時間の審査や貴重なご意見ありがとうございました。
実行委員長 小林理子
第9回 審査員のコメント
石若 雅弥
レベルは様々でしたが、どの方々も音楽を楽しんでいらっしゃるのがよく伝わってきました。
3回目の動画審査ということもあり、収録にも慣れてきているようにも感じます。
残念だった点は伴奏楽器などとの音量バランスが悪いように思う演奏がいくつかありました。
撮影した動画をよく聞き返し、よりよいアンサンブルを目指してみてください。
石若審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)
プラス評価 はっきりとした音が出せていますね。/ 情感たっぷりに演奏されているのがよく伝わります。
マイナス評価 (課題曲)四分休符で流れが止まってしまわないように。/ 演奏が終わった後の余韻をもう少し感じたい。
本城 泰浩
はじめに
一堂に会してのホールでの臨場感と違っての動画審査、初体験の私には不安をかかえながら興味深く拝見・拝聴させていただきました。加え、凝視してしまい考えさせられる場面も多くありました。感想的になってしまいますが、表現力に物足りなさが強く残ってしまいました。それは、
1. 楽器の特性なのでしょうか
2. 呼吸法なのでしょうか
3. 大事なソルフェージュ力の不足なのでしょうか
4. 映像(録音も含め)だからでしょうか
5. それとも・・・・
コンクールは優劣を決めるもの、映像の前で見聞きする者に強く語りかけて欲しいものです。見聞きしているうちに、一位合格、二位合格、不合格・・と、試験官の気持ちになってしまいました。
シニアの部
1. 課題曲
一例ですが、譜面上3段目のフェルマータは何の意味があったのでしょうか。加え、三連音符、付点音符、最高音、最低音らを考えて演奏するよりも、さらりと表現され気持ちよく聞けた方々が入賞されました。
2. 自由曲
シニアの場合の選曲は、よく知られていてご自分の好みのメロディックか、楽しいリズムがよいのではないでしょうか。説得力もあり、審査もしやすい(私だけかもしれませんが)と思っております。今回の一位はまさにぴったりでした。
合奏の部
アンサンブルの審査は失礼を覚悟して活字にさせていただきます。審査中、点数も言葉もうかばず、焦り冷汗ものの時間でした。理由は上手下手の問題でなく、聞こえてくるヒビキしか「出ない楽器なのか」「録音なのか」「出さないのか」です。(説明は長文になるので省略させていただきますが)選曲に発想の転換をはかるようにしたらいかがでしょうか。要は豊かでのびのびした響きです。コンクールです。優劣の争いです。やれないではなく、やらないのではないでしょうか。該当者なし、(デュエット・)合奏の部だけでしたので。失礼をお許しください。
一般の部
出場の皆さんのほとんどが演奏技術は習得されており、上手が当たり前で、下手が不思議と思わせていただきます。自由曲の採点は高得点がつづくのでとても楽しく時間が過ごせましたが、問題は大変さの課題曲。要項にのっていた楽譜で検討し事前に点数をつけるポイントを決めて臨ませていただきました。曲は、変則変奏曲と自分で名付け、
1. Aの部分は主題が十分活かされたか
2. Bはswingの問題か所、点数差を大きくつける。特にリズム感
3. フェルマータは2か所、どう解釈されたか
4. 主題には歌詞がついています。ことばが伝わるような演奏力
5. 全体のまとまり(表現力でしょうか)
グランプリに「該当者なし」は、表現力の物足りなさというか、大きくまとめられなかったからなのでしょうか。適当な言葉かどうかわかりませんが、大胆に映像の前に居る者たちに語りかけてもらいたかった心境でした。
本城審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)
プラス評価 音出しに引き込まれました。/ 表現力の素晴らしさに感動いたしました。
マイナス評価 呼吸法の勉強されることを希望します。/ 変奏でのテンポのキープ。
嶋 和彦
音楽は芝居のセリフと同じですから、句読点や抑揚や声色などが必要です。それが、表現力を豊かにします。表現を支えるのが技術です。のっぺらぼうや正確さのみというのはいけませんね。また、伴奏とのバランスも大切だと思います。本末転倒になってはいけないですね。
嶋審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)
プラス評価 テンポが安定し、情感も出ています。/ 安定した演奏でした。/ 吹き慣れた曲に感じました。
マイナス評価 楽譜を正しく演奏できるようにしてください。/ 曲想を明確にしてください。
先日の審査会では楽しく聴かせていただきました。みんな本当に素晴らしいです!ですがコンクールですので、今回は思ったことや感じたことを率直に書かせて頂こうと思います。
一般課題曲)
ミスの少ない丁寧な演奏が多かった印象です。16分音符の変奏部分(A)では、まずは均一に演奏できることが大切ですが、それだけではなかなか立体的には聞こえてきません。まずはテクスチュア(音の組織)を理解しましょう。「メロディ側」は上手く響いていても「伴奏側」に繰り返し出てくる「低いド」「低いラ」の音程がお粗末だとそちらばかりが耳についてしまいます。結局はソルフェージュ能力だと思いますが、低音域の音程や跳躍音程の誤差は演奏しながら微妙な修正ができるように。今回入賞された方の演奏ではアゴーギグもうまく使えていて、より立体的に組み立てられた演奏を聴くことができました(でももっと出来ると思う)。スウィングの(B)部分ですが、跳躍音程のスウィングと順次進行のスウィングは違っていいと思います。ずっと同じは聴いていて飽きます。秩序の中の「自由」をもっと見つけて欲しいです。
シニア課題曲)
楽譜に書かれた音符を、しっかり「歌」に戻しましょう。今回の課題曲は特に、付点音符や3連符になった途端音符が頭に浮かぶ演奏箇所が多かったです。お風呂で本気の鼻歌はいかがですか(ここにも秩序は必要です)
自由曲)
ご自身の良い部分が出せる曲、オカリナに似合っている曲を選択されているのだと思いますが、よくまとまった「安全」な演奏が多かった印象です。聴いていてとても心地良かったですが、入賞を狙うならもう一歩先へ。攻めた演奏、選曲の方が好印象です。(曲の速い遅いに関わらず、ダイナミックに挑戦して欲しい、という意味です)また、録画された会場がそれぞれです。例えばアゴーギクの幅、トリルの速さ、フェルマータの長さ、ヴィヴラートの深さや速さ、などは演奏場所の響きや、曲に合ったものを選択できるよう、いくつも引き出しを用意しておきましょう。
デュエット)合奏)
ほとんどが音程に苦労されているという印象です。オカリナって簡単で難しいです。合っているようで合ってない。合いそうだけど合わない。さっきは合っていたのに。あれ?そこは?。そんなに上げられないよ〜!。
もうちょっと折り合いをつけられるようにしたいですね。
橋詰審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)
プラス評価 流れるような美しい演奏でした。/ 音程、音質共に明瞭です。
マイナス評価 音に楽しさがもっとあると良いです。/ 同時代の作品をたくさん聞きましょう。
小林 達夫
昨年第8回のコメント(過去のコンクールよりご覧いただけます)でも書きましたが、「では」演奏はやはり残念です。「でも」演奏は上手だなあと思いますが、せっかくのオカリナの良さが発揮されず窮屈なところばかりが目についてしまいます。今回は少し長くなりますが、具体的に気がついたところを書かせていただきます。
1)選曲について
時間の関係で大幅なカットが必要な曲はやはり向いていないと思います。また、そもそもオカリナ用に作曲されている曲自体は歴史的にも少ないので、「編曲、改変」という過程を経ることになりますが、原曲や出版譜の著作権に留意し尊重しつつ、法的にも音楽的にも無理のない「編曲、改変」をしないといけないですね。自分が演奏しようとする曲(楽譜)の成り立ち、その著作権について理解と知識を深めてほしいと思います。
2)楽譜について
楽譜は地図のようなものだと思います。地図は便利ですが、それを見ながらの運転では危険ですね。音楽に置き換えると「楽譜を見ながらの演奏」は「地図を見ながらの運転」と同様ではないでしょうか? 暗譜演奏を基本にしたいと考えています。楽譜使用が目につくとき(顔の高さもある譜面台、はみ出すような楽譜、目がまるで楽譜から離れないなど)小林は減点しています。そもそも覚えていない曲をまともに吹くことは困難なのではないでしょうか。
3)スラーについて
多くの管楽器で使うスラーという奏法ですが、楽器の歴史的な変遷で大きな音量を獲得した楽器用に発達した奏法ではないかと思います。音量や音色の変化に頼ることのできないオカリナではあまり有効ではないと考えます。オカリナでは音の長短の差による表現がとても大事で、スラーをタンギングが間に合わないことの解決策に使うべきではないと思います。
4)フルート流奏法のこと
上のこととも重複しますが、フルート(やその他の管楽器)を経験された方はぜひモダンフルートと古典フルート(ベーム式より前のまだキーが少ない頃、逆円錐管)の根本的な価値観の違い(機能の優劣ではなく)について研究されると、オカリナの特性についての新たな発見があるのではないでしょうか。モダンフルート奏法のままでオカリナに取り組み、表現力の弱点を音域拡張(複管など)で補うことには(私は)賛成できません。
5)タンギングについて
タンギングはまず「音名タンギング」にならないように留意してください。発音時に(無意識にでも)口の中でカタカナの音名(ドレミファなど)を唱えていると口の容積がそれに応じて変化して不自然な音色の変化になります。音色を磨くためにはタンギングを磨くと良いですね。(ここでは書ききれないので、今後スイートポテトのHPにブレスのことも合わせて、順次記載していこうと思います。興味のある方は時々ご覧ください。)
6)音程について
オカリナで上手下手が一番別れるのは音程だろうと思います。入賞者の演奏には「音程がよく合っている」という共通点があります。「よくできているはずなのに‥?」という方は音程を見直すことをお勧めします。アンサンブルの時は「合わせる」という作業の前に「各自が正しく」という準備が大事です。そして、正しい音程を得るためには基本奏法(特に息づかいと離した指の確保)の充実が大事です。
次回はもっと「でこそ」演奏が増えてくることを期待しています。
小林審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋
プラス評価 暗譜が良いです。/ よく構成されていると思います。/ 良い響きですね!
マイナス評価 曲の練習よりも各自のグレードアップをしたいですね。/ テンポが指の都合次第になっています。
池上 敏
1)コンクールに出るからにはちゃんとした演奏をしなくては、という御心構えの方が増えたンでしょうねェ、「此れはコンクールに出場されなかった方が良かったのでは??」というレヴェルの(凄まじい)演奏は減ったと思います。一方で、上のレヴェルの方々は伸び悩みという気がします。
2)演奏の上では、やはり基礎的なソルフェージュ能力をお持ちと思われる方が良い演奏をしておられるように思います。あとは、自分の演奏を録音してちゃんと改善点を把握されることが大切ですネッ。
3)一般の部の課題曲「ロング・ロング・アゴー」の「B」からの Swing のリズムが途中から甘くなる方がとても多かった。楽譜の書き方にどうしても引きづられるようなら、御自分で楽譜を書き直して練習するくらいの熱意が欲しいですね。
4)伴奏とのバランス、相性にも神経を使っておられる方々が高得点を得ておられます。当然ですが。もう一点。選曲に一工夫、二工夫されていることが分かる方々も得点を伸ばしておられます。正直なところ、ピアノというオカリナが張り合うには荷が重過ぎる楽器を伴奏に選ぶよりは、音量調整が容易に出来る電子楽器を使う(例えば、電子チェンバロや電子オルガンなど)、という発想があっても良かったように思います。今回のコンクールの規定を読む限りではこの使用は禁止されているようには思えないし、また録画審査であることから実際の舞台演奏では困難なことも録画ではズッと容易に出来ますから。ただ、来年からはステージ審査に戻すつもりと実行委員会から伺いましたので、この項を読まれた方はどうぞご注意の上で来年のことをお考え下さいネッ。
5)どの楽器でも「高音の種類は上ずり、低音種類は落ち込む」という音の特性があります。其処の補正をちゃんとクリア出来た団体が全くと言っても良い程無かった。やはりソルフェージュの問題でしょう。また、技巧的に達者な人達を集めてみても良いアンサンブルになるとは限らない。勿論ある程度以上の演奏技巧は絶対に不可欠だが、合奏にはソロとは違う能力やセンスも必要不可欠。コンクールでの高い評価を狙うつもりならば、そういう辺りにも目配り、気配りを是非していただきたい。他分野の話しですが、某々弦楽四重奏団のリハーサル、かなりの時間を要所要所のピッチの調整に費やしていたそうです。
池上審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)
プラス評価 歌心があって良いですね。/ 基礎(ソルフェージュ)が大変にしっかりしている。
マイナス評価 (課題曲)B でSwing が緩くなるのが惜しい。/ 全体表現としてオカリナがピアノに負けている。
エミリアーノ・ベルナゴッツィ
日本で長年行われてきた世界で最も重要なオカリナコンクールに今年も招待されました。 このコンクールは細部に至るまで良く組織されており、主催者は芸術的な人生 を音楽に捧げてきた偉大なミュージシャンであり、オカリナという楽器を生かす方法を知っているという点で重要なコンクールだと思います。 今年も審査員としてこの素晴らしいコンクールに関われたことを光栄に思います。
私はすべてのパフォーマンスに感銘を受けました。特にシニア部門のパフォー マンスを聴いたときに。 私の心は、「音楽の力」とすべての出場者の努力の成果に打たれました。彼らの音楽を聴くと興奮し、評価をすることを超えて私にとって彼らはすべて勝者です。なぜなら音楽とともに生きるすべての人々は皆優れているからです。 このコンクールのもう一つの重要な要素は、常に新しい課題曲を出場者に提示していることです。各出場者が自分の力を最大限に発揮できるように準備を整えていることに感銘を受けました。 参加したすべての人々とこの壮大なコンクールの主催者全員に最大の拍手を送ります。
また、共に審査をした審査員の方々に感謝を捧げます。
最後に皆さんご存じだと思いますが、音楽は決して競争であってはならず、それ を演奏する人と聴く人の間で分かち合う喜びです。 コンクールでは数字で結果を出さなければならず、私にとってますます難しく なっています。だから皆さんの演奏を見たり聴いたりして感動したことを伝え、皆さんの真摯な姿勢に心からの感謝を伝えます。
「人は音楽なしでは生きられない」 エミリアーノ・ベルナゴッツィ
エミリアーノ審査員 個評からの印象的な言葉 部分抜粋(選者:小林達夫)
プラス評価 あなたの音楽の作り方は素晴らしい感情を伝えることができ、私の心を打ちました。
マイナス評価 もっと簡単な曲を吹いてみて、少しずつ成長していくようにアドバイスします。